その人らしい装いはどのようにして生まれるのか——自分らしい生き方を確立している方たちのライフスタイルとお気に入りの一着との関係性を紐解く連載『私を語る一着』。第8回にご登場いただくのは、エッセイストの小川奈緒さんです。
小川さんのキャリアのスタートはファッション誌の編集者から。29歳でフリーランスになり、結婚、出産を経て、郊外の和風住宅をリノベーションして生活の拠点を移したことを機に、暮らしをテーマにした著書を手がけるように。また、noteの記事配信や音声メディアVoicy「小川奈緒の家が好きになるラジオ」の人気パーソナリティとしても活躍。14冊目となった最新刊『家で整う』(集英社)では、自分らしく整う家時間について、美しい写真と文章で紹介されています。
その時々の感覚に誠実に向き合い、しなやかに生きる人。そんなイメージがしっくりくる小川さんが装いの定番として信頼を寄せる、ソージュのタックワイドパンツ。この一着が彼女の感性にどのようにフィットしたのか。小川さんのストーリーをお届けします。
自分が楽しいと思えることで、人を喜ばせることができるか
私がライフスタイルを軸に仕事をするようになったのは、実はここ10年ぐらいなんです。出版社を離れて独立したときはまだ20代で、しばらくはファッション誌のエディターとしての仕事がメインでした。ただ、もともとファッションと暮らしを分けて考えていたわけではなくて。外で頑張って働いて、帰ってからは家の時間を楽しくするというのは、いまと変わらないし、若い頃からインテリアも料理も器も好きでした。
初めて自分の名前で書籍を出したのが、2013年。それが『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)という本です。自分の家と友人の家を取材して回って、「家を見ると人がわかる」という視点で書いたのですが、重版もかかり、結構広く読まれることになりました。その頃の私は、ファッション誌の仕事を長くやってきたけれど、最新のものを身につけるのが楽しくてたまらないというほどではないし、なにより子どもが小さく、子育てで忙しいということもありました。インタビューやインテリアのページも作っていたので、どういう方向でもいけたと思うのですが、ずっと飽きずにやっていけるのは、家のことなんじゃないかと気づけたのは、この13年前の経験があったからだと思います。
フリーランスはどう働いてもいい自由さが魅力で、私はその自由さを選びとっている立場。だからこそ、自分が我慢して苦しくなってしまうのは、フリーランスでいる意味がないと思っています。ひとつひとつの仕事に対して真摯に取り組みながら、「自分が楽しいと思えることで、人を喜ばせることができるか」をすごく冷静に見ています。
noteやVoicyでも、私が伝えたい核のところは重なっていて、話を聞いて終わりではなく、今日から生活に取り入れてもらえるような導線をつくることを意識しています。濃いフォロワーの方はまず音声で聞いて、そのあと記事を読んで....という風に深掘りするように楽しんでくださっているのがわかります。反応がちゃんと返ってくるので、誰にどういうボールを投げるか、自分の中で迷わずにいられる。とてもありがたい状況だと思っています。

少なすぎず持ちすぎない、ほどよいバランス
私にとって、全てのことに共通する美意識は、少なすぎず、持ちすぎないこと。ミニマリズムを求めているわけではないし、マキシマリストのようにものがたくさんあるのも落ち着かない。自分の中での適量やものの置き方があるのですが、それは方程式のようにすっきり言語化できるものではなく、空間に身をおいていればわかる感覚的なことだと思います。なにか寂しいなと思ったら、植物にいい働きをしてもらうことは多いですね。すぐそこに自然があるというのは、家にいて心地よさを感じられるところだなと感じています。
私は家のどこもかしこも好きなんです。そういう風に思っていると、いつまでも家に飽きずにいられる。微妙に使いにくいと感じるところをどうやったら使いやすくなるかと考えるのも好きですね。ちょっと模様変えをしたり、ものを減らしたりすることで、ぐっとお気に入りの場所になることもあります。
家で仕事をしていると、理想的なタイムスケジュールはあっても、想定外のことが起こる場合もあります。そういうときは、うまくいかないのではなく、そういう日なんだと思うようにしているかな。あと日頃から、予定通りに進まないことがある前提でスケジュールを立てるようにしています。ひとつのタスクに対して、どれぐらい時間がかかるのかを現実的に見定めておくと、うまくいった場合は余白の時間ができる。時間に余裕がある毎日を過ごすことは、自分の感覚を鈍らせないためにもすごく大事だと思っています。

着てみたらすごく好みだった、タックワイドパンツ
ソージュを知ったのは、娘の卒業式と入学式のためのセレモニー服を探していて。セレモニーにきちんと対応しながら、日常使いもできるアイテムを打ち出していて、私もそういう服を探していたので、コンセプトにまず惹かれました。そのときに購入したのはタックパンツなのですが、当時は「テーパードパンツが似合う」と思い込んでいたんですね。その後、ソージュのスタイリストさんからサイドタックワイドパンツを勧められたときも、大きく見えてしまうのが嫌で躊躇していたのですが、穿いてみたらボリュームが全く気にならず、すっきり見えることに感動しました。
ワイドパンツへの苦手意識が薄れてきた頃に、さらに太いタックワイドパンツに手を出してみたんです。実際に着てみたら、すごく好みで。合わせるもので表情が変わり、どういう風にも穿ける自由さに惹かれました。基本的に私はマニッシュなスタイルが多いのですが、このパンツは、靴にしてもコートにしても自分の手持ちのアイテムと合わせやすい。普段よく組み合わせるのは、ウールハイゲージドルマンスリーブプルオーバー。ボトムスのボリュームに対してトップスはコンパクトにまとめて、足元にハッとするようなポイントがあるコーディネートが好きですね。

普段からよく履いているという「アディダス」の“SL72”と「chausser(ショセ)」のウィングチップレザーシューズ。ボトムスと靴の色を合わせることはせず、靴で抜け感をつくるのが小川さん流
“自然体でいること”と“着飾ること”は矛盾しない
お会いした相手に「この人はおしゃれが好きなんだな」と思ってもらえるのは、すごく素敵なこと。私はやっぱりファッションが好きだし、コミュニケーションとして誰かとファッションの話をする、そういう引っ掛かりをつくっておきたいという気持ちがあるんです。ソージュの服は強いデザインがあるわけではないけれど、アクセサリーやスカーフを足したり、いろんな風に盛っていける。自分の色を加えていける余地があるところがすごくいいなと思っています。
服がその人になじんで自然体でいられるのは、おしゃれにおいて大事なことだけど、それと着飾ることは矛盾しないんです。ベースが上質だと、シンプルに着てもさまになるし、個性もつけられるし、おしゃれが楽しくなりますよね。そういう意味でも、ソージュはいろんな悩みが噴出しがちな大人のおしゃれを、土台から支えてくれているブランドだなと思います。

オーガニックコットンシアーシャツ(BLUE GRAY)を合わせてくださった小川さん。
聞き手/文:中島文子
《Profile》
小川奈緒
出版社勤務を経て、フリーランスのファッション誌エディター&ライターとして活動したのち、現在はライフスタイルのエッセイを中心に執筆を行っている。最新刊『家で整う』ほか、『伝え上手になりたい』『家が好きで』『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』など著作数は14冊。音声プラットフォームVoicy「家が好きになるラジオ」やnoteメンバーシップ「縁側日記」、またインスタグラムでも、自分らしい生き方や働き方の過程を発信している。
小川奈緒さんの一着




