なぜこのブランドが今の時代に必要だったのか？ 新しいブランドと出会う時、私はいつもそう考える。化粧品の世界はずいぶん前から飽和状態。もう無いものはない、無い色もない。既に充分すぎるほどなのに、なぜ生まれなければならなかったのか？ そんなことを追求できる立場ではないけれど、そこが腑に落ちないと、モノが溢れ、廃棄されていくような今の時代、新たな化粧品の誕生を素直に喜べないからなのだ。  

そんな中で、出会ったのがTOERI（トーリ）。強い主張は無いのに、すぐにわかった。これをほぼたった1人で作ったという開発者は、化粧品がいま何をすべきなのかをよーく知っている人であること。

スタート時の、絞り込まれた3アイテムと、選りすぐられた最小限の色……それを見ただけで、わかったのだ。化粧品の問題点と私たち使い手の迷いを、全て払拭する術が凝縮されたブランドであると。しかも何という趣味の良いパッケージだろう。それは紛れもなく、化粧品の正解を隅々まで知っている証に他ならない。

時間が経つほど肌が艶めくクッションファンデーション。カールが1ミリも落ちてこない、1%も滲まないマスカラ。誰が塗ろうと魅惑の唇になり変わる2色の口紅。新たに仲間入りする（2025年1月11日発売予定）アイブロウパレットも、100人100通りの眉を難なく描き出す天才……「無駄なものは作らない、必要なものしか作らない」のは一目瞭然。でもそれだけじゃない。

メイクもコスメ選びも、難しく考えるから迷路にハマる。だから実はもっと簡単であるのを身をもって教えてくれる。美容はアッという間に済ませて即刻キレイになって、その分、他のことに時間を費やして、暮らしをもっと彩り豊かにしましょうよ、そんな提案が見えてくるのだ。私はそこに大拍手！ 

もちろん“美容好きの没頭”も幸せを生むけれど、鏡にしがみつかず、もっと大きな視野と歩幅で動き回った方が、幸せの量も種類も増えて、ずっと味わい深い人生になる、そんなふうに思うから。

私たちの迷いや不安を知っている服？

ただ、化粧品はそれを生んだ背景を見なければ本当の評価はできない。皆一見同じような顔をしているから。そういう意味でもトーリは、只者ならない。

今、急成長を遂げるファッションブランドSOEJU(ソージュ）がその母体。俊英の女性経営者として注目を浴びる創業者、市原明日香さんは東大卒。コンサルやハイブランド、ベンチャー企業で完璧なキャリアを積むも、ご長男が白血病に倒れ、仕事自体を辞めなければならなくなる。しかしその深い苦悩が7年後、自ら起業する決断をさせ、苦手意識のあったファッション界への“あえての挑戦”に繋がった。そして何を着ていいか解らないない人にワードローブを提案するアプリを立ち上げるのだ。

しかし月額1000円の会員がわずか100人という苦況が2年間も続く。ただ諦めることはなかった。やがてスタイリスト目線でオリジナルの製品を提案するようになり、倍々に会員が増えていく。

着ることの迷いや不安をわかった上での提案は、退屈にならないベーシックや、着回しのためのシンプルを生み、だから否応なしに着こなすことが上手くなり、着ることが楽しくなる、それが人生の喜びにまで昇華することを教えるブランドとなったのだ。

そう実は、着ることもメイクすることも、嬉しいのにどこか辛い。時々面倒になったり、どうすれば？と途方にくれたり。そこから、私たちを救い出して、粧うことの喜びに気づかせてくれるのがソージュであり、トーリなのだ。

それも全く押し付けがましくなく、どこか謙虚なほど自己主張しないのに、粧うほどにしみじみ素晴らしさが伝わり、愛おしくもなる、生まれながらの名品……今まであっただろうか？ そんな役割を担うブランド。でもだから成功した。どちらの市場もカオス状態、そんな中で生まれて、みるみる支持を集めていった。これほど気負いのない物静かな成功もないはずなのだ。

かくして今、みんなにこう伝えたい。

「トーリがあるから大丈夫」

自分の迷いや不安をちゃんと知っていて、必ず心地良い自分に導いてくれるから。そう思える化粧品は、ビジネスを超え、生まれるべくして生まれたのだ。生まれてくれてありがとう、そう言いたくなる化粧品である。