Special Interview
TOERI Meets Megumi Shinozaki
「人を幸せにする」 花とメイクの美しい共通点
Special Interview
TOERI Meets Megumi Shinozaki
「人を幸せにする」
花とメイクの美しい共通点

「花を棄てずに未来へ繋げる」を理念に、花のクリエイティブスタジオを主宰する篠崎恵美さん。広告や展示会の装花、ブランドとのコラボレーションなど、フラワーアーティストとして活躍しながら、生花やドライフラワーのお店、植物の循環をテーマにしたコンセプトショップ、紙の花のクリエイション等、さまざまな形態で花と人を繋ぐ場を創出しています。
今回は、花と対話するプライベートスペースのようなフラワーショップ「edenworks BEDROOM」 でインタビューを実施。独自の感性で花や植物の魅力を伝える篠崎さんの内面を紐解きながら、ご自身が思う美しさや、TOERI(トーリ)というブランドについてお話を伺いました。
Profile
篠崎 恵美
edenworks主宰/フラワーアーティスト。
「花を棄てずに未来に繋げる」を理念に、独自の感性で花の可能性を引き出し、花のロスを最大限に無くすクリエイションをする。
店内装飾からウィンドウ装花、雑誌、広告、CM、MVなど、花にまつわる創作を広く行う。また、2017年にイタリア ミラノで紙の花のクリエイションを発表。ブランドとのコラボレーションやインスタレーションなど、アーティストとしても国内外で活動中。
ひとりひとりに寄り添う花屋として
代々木八幡駅から程近く、商店街の一角にある「edenworks BEDROOM」は、週末限定のフラワーショップ*として2015年にオープンしたお店。テナントビルの3階にあるスペースは、窓から入る陽の光がブラインド越しに揺れ、中央にあるベッドが空間を大きく占めています。
*2025年4月現在は、不定期でフラワーショップとしてオープンしたり、ワークショップの開催などedenworksのクリエイションを生むスタジオとして稼働。最新情報は、公式インスタグラム(@edenworks_)などでご確認ください
「ベッドの周りをぐるぐる回って、花を好きな者同士が会話しながら花束を作るみたいな感じが理想なんです」と篠崎さん。彩り豊かな季節の花々から数本を選び、あっという間に瑞々しいブーケが完成しました。

お客様もスタッフも同じ目線で花と向き合えるように配慮された空間の設えには、篠崎さんの哲学が反映されています。
「人間は人生の始まりも終わりもベッドで過ごしていますよね。花も生死があり、生き物として扱う中で、なにか素敵な出会いやストーリーがここから生まれたらいいなと思って。花をただ売るのではなく、 “花の秘めた可能性を引き出せる場所”というのが、この店のコンセプトです」

花に触れている時の屈託のない笑顔が印象的な篠崎さんですが、学生時代はファッションを学び、花を仕事にするとは全く考えていなかったのだといいます。一旦はアパレルの仕事に就いたもの業界のサイクルに違和感を覚えていたときに、何気なく入った町の花屋がきっかけで直感的に花の世界へ。店での下積みを経て、フラワーアーティストとして店舗ディスプレイやイベントの装花を手掛けるようになるも、花のことを知ったのはほぼ独学で。流派やしきたりに捉われない、伸びやかな表現も彼女の持ち味です。
独立後6年間は花材のロスを出さない形でクライアントワークを続けていましたが、普通の暮らしの中にある花も諦めきれず、ひとりひとりに寄り添う花屋として始めたのが「edenworks BEDROOM」。そこから「花を多くの人に届けたい」という気持ちが膨らんでいったのも自然な流れでした。
「店を運営するとどうしても売れ残りが出てしまいますが、人間のエゴで無駄にしてしまうことがすごく嫌なんです。最初から計画していたわけではないのですが、ドライフラワーの店を出したり、コンポストにして植物の循環に繋げたり、花の可能性をどんどん追求していくことで事業が広がっていった感じです」

花には人を幸せにする力がある
「花はすごく可能性を秘めている」そう篠崎さんが確信する背景には、幼い頃から花があるのが当たり前だった家庭環境があります。ひとり暮らしをしていたときに感じた物足りなさの正体が花であることに気づいたのも、実家の風景を思い起こしたときでした。
「母が花が好きな人で、庭の花を摘んで小瓶に挿したり、いたるところに花がある家だったんです。華奢で病気がちな人で、私たち家族は心配したりもしていたのですが、花に触れているとすごく楽しそうで。当時から花には人を幸せにする力があるんだなと感じていました」
花は人を元気にし幸せにしてくれるものである一方で、花を生かすのは大変な仕事。だからこそ、篠崎さんは共に働くスタッフに「ポジティブな気持ちが絶対に未来をよくする」ことを意識的に伝えるようにしているのだといいます。
「花の可愛らしさを見て気持ちが上がりますが、メイクもそうだと思うんです。美しさとか気持ちを上げるものは残っていってほしいなと思います」

「桜梅桃李」に感じる奥ゆかしさ
メイクは気分を上げてくれるものだけど変わりすぎてしまうのは苦手、という篠崎さん。トーリアイテムの中では、大人っぽいリップの色合いや眉毛の隙間を立体的に埋めるアイブロウワックス&パウダーのナチュラルなつけ心地が、感性にフィットしたといいます。
「リップは時間が経つほど色が良くなって、自分のものになる感じがすごいですよね。どんどん自分に馴染んでいくのはなかなかできない気がします。日本人はいい塩梅を表現するのが上手だなと思うんですが、ニュアンスある色の出し方も絶妙だと思いました」

トーリのブランド名の由来「桜梅桃李(おうばいとうり)」についても、篠崎さんらしい感性で日本独特の奥ゆかしさを連想されたと話します。
「どれも冬から春にかけての花で、たくさん咲くと豪華だけど、ひとつひとつはとてもシンプル。落葉樹なので冬は何もない状態で、毎年春先に蕾が出てきて花が咲いて、ひらひら落ちてから葉っぱが出てくる。その後実になって、葉っぱが落ちて、また冬になるというサイクルも元気すぎず、奥ゆかしい感じがして。同じ季節の枝の花でもそれぞれの香りがあって、人々にすごく親しまれているというのも素敵ですよね」

儚いものの強さに惹かれて
花を棄てないために始めたドライフラワーのお店「EW.Pharmacy」もひとつひとつの花に焦点を当て、原産国や花言葉など背景を伝える手法がユニークです。
「風邪をひいた時に病院で処方箋をもらって調剤薬局に持っていったら、自分の症状にぴったりの薬が出てきて、これを花でやったら面白いと思いつきました。お客様の要望をお伺いしてパッケージに詰めるのですが、処方箋がつくので選んだ花のストーリーを知るきっかけにもしてもらえるかなと。たとえば男性が女性にプレゼントしたときに、言葉で伝えるのではなくて、花で気持ちを伝えることもできますよね」
無機質なパッケージにきゅっと詰まった花々は、華やかな色を瞬間的に体に留め静かな佇まい。ドライフラワーできれいな色を出すにはスピードが重要ですが、生きている花の美しい瞬間については、別の視点からの感動があるのだといいます。

「花は明日枯れてしまうというときの“今日”が一番きれいだなといつも思います。女性も年齢を重ねていくことで深みが増していくといいですよね」
その刹那的な輝きを留めるかのように、篠崎さんは「儚いものの強さ」を紙の花のクリエイションに昇華させています。
「私が紙で花をつくるのも、花の儚さがすごく強いと感じたから。紙は濡れるとくしゃくしゃになり、衝撃で破けてしまうくらい弱い素材だけど、貼り合わせることでピンとして硬くなる。手法を工夫することで儚いものが強くなるんです。その相反することを含む紙で、花を表現したいと思いました」
人それぞれの大切なことを繋いでいける世の中に
「花と必死に向き合うことは、自分が生きていることを実感する」と優しいオーラの奥に強い情熱を垣間見せる篠崎さん。ご自身のクリエイティブな活動が忙しく、なかなか店に立てなくても、時々「edenworks BEDROOM」で開催するワークショップでは、訪れるお客様ひとりひとりと接する時間を大事にされています。

「いまと同じように花がずらっと並んでいる状態で、好きなものを選んでください、みたいな感じで自由なんです。私が作るサンプルはあってもそれは正解ではない。『自由はすごく楽しいこと』とお話しながら作ると、『これでいいんだ』と気づいていただけたり。自分の好きが見つかるワークショップになったらいいなと思っています」
それは花に限ったことではなく、「人それぞれの大切なことを繋いでいけるようになってほしい」というのが篠崎さんの願い。「作品を作って終わりではなく、その先のことを考える姿勢を伝えていきたい」という言葉に、ぶれない芯の強さを感じます。
「日本人ならではなのかもしれないですが、“もったいない”とか“ものに感謝する気持ち”を失くしたくないなと思うんです。おばあちゃんの考え方って、もともとそうだったなと感じていて。ものがたくさんある時代になくなってほしくない精神だし、未来にも繋げていきたいですね」
聞き手/文:中島文子
About SOÉJU
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