思いを伝える舞台だからこそ、私らしい装いを。 −ソージュが「BWAピッチコンテスト」で提供したパーソナルカウンセリング−
2024年7月にポットラック ヤエスで「フィガロジャポン」が開催したビジネスコンテスト「BWA Pitch Contest 2024」。今年で3回目となるBWAピッチコンテストは、ビジネスの規模や成長性を評価することよりも、起業を通じて社会をより良くしていこうとする、女性起業家それぞれの『思い』に焦点を当てていることが特徴です。
今回はモデラート株式会社代表の市原が審査員として参加。「SOÉJU(ソージュ)」は、出場者たちへのサポートプログラムとして、スタイリングサービスを提供しました。
実はプロのスタイリストによる「パーソナルカウンセリング」は、ソージュを立ち上げる前から継続している、ブランドの根幹を支えるサービス。自分が立ち上げたビジネスを伝える特別な機会に、出場者たちにどう寄り添い、装いについてどんなアドバイスをしたのか?担当したスタイリストのインタビューも交えて、舞台裏を振り返ります。
目次
ソージュとBWAの出会い
ソージュが「BWA(Business with attitude)」と関わりを持つようになったのは、モデラート代表の市原が、「新しい選択肢をつくる女性たち」というテーマで開催された「BWA AWARD 2023」を受賞したことがきっかけです。
「フィガロジャポン」が2021年から始めた「BWA」は、「アール ドゥ ヴィーブル(暮らしの美学)」の価値観を持って働く女性を応援し、誰もが幸せに暮らせる日常を目指すプロジェクト。「BWA AWARD」はその活動のひとつで、ほかに多様な働き方や女性起業家の活動を紹介するセミナーやワークショップ、そして身近な課題を解決するためのビジネスアイディアを発表する「BWA ピッチコンテスト」を開催しています。
「BWA Pitch Contest 2024」会場風景より。photography: Mirei Sakaki
BWAの様々な取り組みを通して、市原が特に共感するのは「アール ドゥ ヴィーブル」という価値観。何気ない日常の中にある豊かさや美しさを自分なりの方法で愛おしむアプローチは、「すべてのステークホルダーが心地よく社会とつながるための事業を誠実に歩み続ける」というモデラートの企業理念とも親和性を感じるのだといいます。
そんな折、市原のもとにBWA事務局から「登壇時の装いに迷う出場者をサポートしてもらえないか?」という相談が届き、ソージュのスタイリングサービスを提供することになりました。
7人のファイナリストに見る「行動」を起こすことの尊さ
ピッチコンテストで個々に与えられたプレゼンテーションの時間は、たった5分。登壇した7人のファイナリストたちは、限られた時間の中で、起業に至った経緯や事業内容、それぞれの熱い思いを、表情豊かに語りました。
日本と新興国を繋ぐIT人材育成事業、幼児のためのオーダメイド総合教育アプリ、スポーツ関連の仕事に携わる女性の産前・産後サポートサービス、音楽家のキャリア支援と企業の健康経営を目指すプロジェクト、家庭に眠る不用品をアップサイクルするクリエイティブプロジェクト、孤独を抱える人同士が支え合うSNSアプリ、親子向けコミュニティ旅行の企画など、扱うテーマも幅広く、事業の未来像についていきいきと語る姿に、審査員をはじめ、多くの観客が引き込まれました。
事業内容を評価するような厳しい視線ではなく、「行動を起こした女性たち」を讃える温かなムードが会場全体に共有されているのが印象的でした。
会場風景より プレゼンテーションに聞き入る審査員たち。photography: Mirei Sakaki
今回のテーマは「思いを言葉に」。タンザニアで家族と暮らす角田弥央さんは会場には来られませんでしたが、現地の衣装に身を包み、事前に収録した動画でのプレゼンテーションは、遠く離れた異国で奮闘する女性の芯の強さを感じさせました。
舞台でクラリネットを演奏した田ノ原豊織さんは、華やかなドレス姿で音楽家としてのアイデンティティを表現。自分らしさに蓋をせず、まっすぐな思いを伝える出場者たちのオーラが、舞台上でとてもカラフルに輝いていました。
「BWA Pitch Contest 2024」の7名のファイナリストたち。 photography: Mirei Sakaki
個々のストーリーに寄り添うスタイリングを提案
ファイナリストたちの当日の装いについて、事前のカウンセリングを担当したのは、スタイリストとしてのキャリアが長く、経験値の高さと深い洞察力で定評のあるIWASAKIとUTSUGI。ソージュアイテムに限定せず、ファッション全般の悩みや要望に応える「パーソナルカウンセリング」に近い内容で実施しました。
スタイリングを提案する際に心がけたのは、本人の「なりたいイメージ」を尊重しつつも、起業に至るまでの経歴や背景、事業の内容も含めて、その人柄をビジュアルからもイメージさせること。UTSUGIは登壇時の服装を提案する上で、意識したことをこう振り返ります。
「プレゼンテーションが始まる前は、(舞台上での)ビジュアルのイメージしかないですよね。お話を聞いた上で、ひとつのスタイリングが完成するように、見た目のイメージとストーリーがきちんと繋がるようにすることが大事だと思いました」
親子向けコミュニティ旅行「OLITABI(おりたび)」のコンセプトや活動実績について紹介する「株式会社おりおり」代表 堀真菜実さん。SNSや観覧者の投票で選ばれる「Audience Award」を受賞。 photography: Mirei Sakaki
例えば、親子のコミュニティ旅行を企画する「株式会社おりおり」の堀真菜実さんの場合は、子連れ旅のイメージに配慮しつつも、舞台上での華やぎも重視。ペイズリー柄ワンピースに白のワイドパンツを合わせました。
一般的に、洋服に白を選ぶのを躊躇する方が多いですが、UTSUGIによると、洗える素材だからこそ「白」を試してみてほしいとのこと。セルフケアアプリでメンタルヘルスの課題に取り組む「株式会社祭」の清水舞子さんには、白のノースリーブワンピースをセレクトしました。
「清水さんは普段黒ばかり着ているとおっしゃっていたのですが、金髪や肌の白さとの相性も考えて、あえて真っ白のワンピースをご提案しました。困難を乗り越えて、明るい未来へ向かっていかれている方だと感じたので、『白』を着て今の事業を説明していただいた方が、説得力があるのではないかなと。ブルーのシャツを腰に巻いて差し色にしていただくアレンジもおすすめしました」
自身の人生で、経済的にも精神的にも困難に陥ってしまう社会問題に直面したことから起業を決意。孤独な人が支え合うセルフケアコミュニティアプリ「いつでもおかえり」を運営する「株式会社 祭」代表 清水舞子さん。photography: Mirei Sakaki
IWASAKIもまた、登壇者の背景や事業内容に寄り添った提案を実施。廃材を素材にDIYを体験できるバーを運営する「株式会社RINNE」の小島幸代さんの場合は、お店のHPで見つけた、ブローチ(コサージュ)キットに注目し、ハンドメイドのコサージュにスポットが当たる着こなし方をアドバイスしました。
「小島さんの活動が前に出るような感じがいいのではないかと思って、『お洋服が引き立て役になります』というようなお話をしました」
ものづくりコミュニティバー「Rinne.bar(リンネバー)」を運営する「株式会社RINNE」代表 小島幸代さんは、思いやビジョンに共感できるビジネスにおくられる「Dream Award」を受賞。胸につけているのはハギレやリボン、カラフルな素材でつくったブローチ。photography: Mirei Sakaki
心地よく社会と繋がるための「装い」とは
普段ソージュが提供するパーソナルカウンセリングでは、「自分らしい装いがわからない」という深い悩みに対応することも多いですが、ピッチコンテストの場合は、出場者たちの表現したいことに寄り添うような提案がほとんど。しかし中には「大勢の観客に自分がどのように受け止められるのか」、文化の違いに起因するビジュアルイメージについての悩みも寄せられました。
「角田さんはずっと日本から離れて暮らしていらっしゃるので、日本人の感覚がだんだんなくなってきているとおっしゃっていて、『黒いヒジャブ(スカーフ)で出るのはどう受け止められますか?』と相談されました」
日本人がイスラム文化に慣れていないこともありますが、温度感の伝わりにくいビデオ出演でのダークカラーは、威圧感を感じさせる可能性があります。UTSUGIは、角田さんが特別なハレの日にしか着用する機会がないという、細やかな装飾が施された白のヒジャブに着目し、髪型や空間演出も含めて、明るさや親しみやすさを引き出すような提案をしました。
タンザニアからオンラインで参加した「株式会社Darajapan」代表 角田 弥央さんは、事業性や社会課題の解決につながるビジネスにおくられる「Professional Award」を受賞。photography: Mirei Sakaki
特別なシーンも日常のシーンも、ソージュが提供する「パーソナルスタイリング」は、その場に合う服装の提案で終わらないところが特徴。服の組み合わせだけではなく、着こなし方や全体のバランスで、着る人が心地よくいられる状態に導いていくのがプロのテクニックです。
「シンプルなお洋服も、靴やアクセサリー、髪型を変えるだけで印象が変わります。それをお客様にお伝えすると、たくさん買えばいいわけではないということに気付かれる方もいらっしゃいます」
そう話すIWASAKIが、カウンセリングでよく接するのは、ライフステージの変化に直面して、何を着ればいいのか戸惑っている女性。「買わなくてもいい」解決方法まで提示できるところに、このサービスの良さを感じていると話します。
ソージュスタイリスト IWASAKI
「30代中頃から 40代ぐらいのタイミングで、今まで着ていた服が急に似合わなくなったというお悩みで、カウンセリングを利用される方がすごく多いんです。それは買って解決するものなのかというところまでお客様にヒアリングしながら、解決していく感じはありますね」
「装い」に正解を求めるのではなく、可能性を広げる
「服が似合わなくなった」というのは表面的な悩みのようですが、当事者にとっては社会との接点でどう振る舞えばいいのかわからず、途方に暮れてしまうような感覚があるのかもしれません。
お客様の中には「自分に似合わない服、着てはいけない服は何か?」と切実に訴えてくる人もいます。IWASAKIは提案した着こなし方を、ご自分で日常の中に自然に落とし込めるように、「お客様がそれを着て生活しているイメージ」をきちんと手渡せるよう心がけているのだと言います。
「カウンセリングの後に手書きのカウンセリングシートをお渡しするのですが、最初は緊張されていた方も、着方のイメージが湧くようになると、どんどん表情が和らいできます。お洋服に興味がないとおっしゃっていた方が楽しんでくださると、すごく嬉しく感じます』
カラー診断や骨格診断、一定の基準があるのは便利なようで、無理に基準に当てはめようとすると心が苦しくなってしまうこともあります。それらが服装を考える上で役立っているのならいいけれど、正解を求める行為が足枷になって、ファッションを楽しめなくなっているとしたら、そこからは解放してあげたい。IWASAKIは「可能性はたくさんある」ということを伝えていきたいと話します。
ソージュスタイリスト UTSUGI
「これから事業を発展させていこうと、頑張っている女性の晴れ舞台をお手伝いできたのは嬉しいこと」とピッチコンテストでのサービスの手応えを感じたUTSUGIもまた、「ファッションで着る人をエンパワーメントする」というブランドミッションを改めて再確認した様子。
「女性はライフステージですごく変化しますが、皆さんいろんな階段の上がり方があるので。私たちは横で伴走して、ちょっと背中を押してあげられるといいのかなと思っています」
SOÉJU Fitting Roomのカウンセリングスペース。サービス実施時は個室になり、プロのスタイリストと対面でじっくりご相談いただけます。
ソージュのスタイリングサービスについて
当記事でご紹介した「パーソナルカウセリング」は、SOÉJU Fitting Roomの予約制の有料サービスです。(60分間・5,500円)
事前にご回答いただく体型タイプ・スタイル傾向診断の結果をもとに、お悩みやなりたいイメージに寄り添いながら、プロのスタイリストがおすすめスタイルをご提案します。Zoomを使用したオンライン上での実施も可能です。
特別な日の装いだけでなく、日常に関するご相談も承っております。ぜひお気軽にご利用いただければ幸いです。
文: 中島文子